● 業界専門用語「修正」(修正申告)というもの ●その1  ●第16話 

でも、このお客様の場合、もう一つ大きな壁があります。
それはお客様の年収です。
銀行ローンの場合、借り入れ額限度95%以外に、年間返済額を年収の
40%以内という決まりがあり、2700万円の借り入れを可能にするには
単純計算で年収が450万円という条件が必要です。

私     「部長、ローンアップのことはだいたいわかりました。でも、
       このお客さんは年収クリアしてるのですか?」
山本部長 「そや!そこからが本番や!わしらもちーとは(ちょっとは)
        ええ事するという事教えといたるわ」
       「オーイ!平山!、われこの客・修正(修正申告)・するんやろ、
        これから富ちゃんと行動せいや!」
平山    「え〜!!マジ本気でっか〜!う〜ん、しゃあないな〜しょうみ」
私     「すんません。よろしくお願いします!!」
平山    「まぁええけど、これだけ言うとくわ。わしらが新入社員のときはな
        、誰も教えてくれへんかってんで、先輩の仕事をジーと見て、
        盗んで、後は経験でよーするに体で覚えたっちゅー 事や!
        富ちゃんみたいに・なんで?・連発するけど、口で教えたことは
        すぐ忘れるんや!その辺、よー解っときや!」

と、ちょっと愚痴を言われましたが、平山さんの言う通りだと思いました。
でも、一緒に行動できるのが、誰も知らない世界へ入っていく探検家のように
わくわく・どきどきしている私でした。
そして、私は平山さんとそのお客さんの自宅に伺いました。
(このお客さんの名前は・山下・仮名・と言います)

平山    「こんばんは〜。よいこ不動産の平山です〜。」
山下     「あ〜どうも〜どうぞどうぞ上がってください。」

山下さんは満面の笑みを浮かべて、私達を茶の間に通してくれました。
山下さんは、まだローンも決まってないのに、「ここの部屋のカーテン
何色がいいと思います?」「ここにたんす、ここにテーブルをおいて」等等、
間取り図面に色々と書き、私らに熱く語ってます。
そこに、平山さんがお客さんの話を制するように、神妙な顔つきで・・・・・。

平山    「山下さん・・・実は、ローンがね、いまいちなんですわ・・・。」
山下    「え!!・・・いまいちって、だめなんですか??そ・・・それは
        困ります!!」
       「だって、親戚や親兄弟、はたまた、家の息子なんて近所じゅうに
       ・家買って〜ん・って言いふらしてるのに、・・なんでだめなん
       ですか!!!!」
       「平山さん、ローンはまかせとけって言ってたやないですか!」
平山    「まぁまぁ、ちょっと落ち着きましょうや。銀行って言う所はちょく
        ちょく融資条件を変更する所なんですわ。そして、今回融資申
        込みしたら、銀行の担当が、この融資額やと年収が450万円
        必要やと言うんですわ。」
山下    「そ・・そんな・・私、300万円しか年収ないですやん・・・・・。」
        (ガクッと肩を落としてる)

平山さんは、そっと山下さんの肩に手を置き

平山    「まぁまぁ、そんなに肩を落とさんと、方法はないこともないん
        ですわ」
山下    「!!ほ・・方法??・・・・・なんなんですかその方法って!」
平山    「よーするに、年収を増やせばいいんですよ。私が適当に
        150万円の源泉徴収票を書きますさかいに、山下さんがそれ
       を税務署に持っていって、修正申告するんですわ」
山下    「し・・修正申告・・・?でも、申告したら追加で税金払わないけま
        せんやん。」
平山    「そう、ん十万は払わんとあかんでしょうな」
山下    「そんなん、もともと自己資金0円で家買おうとしてるのに、
        そんな金ありませんわ〜」
       「なぁ〜平山さん、何とかしてぇ〜な〜!」
平山    「まぁまぁ笑、実は!その税金を払わんでいい方法があるん
        ですわ!!」
山下    「!!!ほ・・・・本当ですか!!!!!」
平山    「ハイ、本当でおま。しかしですよ、ご主人と奥様で一世一代の
        大芝居をしないとダメなんですよ。・・・・・できますか?」
         (客を睨みつけるように)
山下    (生唾をゴクッと飲む音が)「は・・・はい!やります!!」
       「ここまで来たんだから、何でもやります!おい!おまえ、
        出来るやんな!」
山下奥さん 「う・・うん!何でもするで!あの家買えるんやったら!」

この夫婦はこの時点で、汗がだらだら流れています。
きっと平常心じゃないんでしょう。
この時、平山さんがチラッと私の方を見て、自信たっぷりにウインクしました。
もう、このお客さんは完全に平山さんの手中のなかです。

山下    「で、その芝居とは?」
平山    「・・・・その芝居とは・・・」

さて、その大芝居とは!!!!!
さぁ、次回、凄まじい光景が!!!!!

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