--------------------------------------------------------
● 初案内 (中間省略編) その3 ●第29話


 その会話を聞いてた田山さんは、私を見ながら、びっくりしたような表情で
口をあんぐりと空けていました。(前回より)

そして田山さんは、私を別の部屋に連れて行き、

田山   「お・・おまえなんでわかったんや?」  

私    「まず最初は田山さんの運転がばかに丁寧なのに疑問を持ち、
      これはなにか意味があるなって思いました。」

     「だって田山さんの運転ってお客が乗って居ようが居まいが
      関係なくレーサー気取の運転するでしょ?」

田山   「だ・だれがレーサー気取じゃい!コラ!」

私    「あはは^^; で、そしてその次は先ほど私がお客様に言った
      ように、階段を上がるときご主人が奥さんをサポートする
      ように上がってたので、その時に『妊娠かぁ?』って気付
      いたんです」

田山   「ほぉ〜・・なかなかの観察力や。こりゃ、部長の言うように
      どえらい買い物したかもな・・・」

私    「は?どえらい買い物??なんすか?それ」

田山   「がははは!いやいやなんでもない。それより、ほら、お客ん
      とこいかな!」

という会話も済み、私はお客様の所に戻りました。

私    「あの〜、そろそろ20分が過ぎたので、行きましょうか?」

吉田   「あ、はい。わかりました」

と、森脇宅を後にし、車に乗り込みました。

私    「では田山さん、吉田さん宅までお願いします。」

というと、田山さんは(おぃ!違うやろ?事務所やろ?)って言いたげな
表情を僕に向けました。でも、私は意味ありげに深〜く相槌をし再度言い
ました。「 吉田さん宅までお願いします。」

しぶしぶな表情で田山さんが車を動かし、私は一切お客さんとの会話も
なく、車は吉田宅に向っていました。
道中、運転中の田山さんは、(くどかんかぃ!)と言いたげで、何度も
私の膝を突いていましたが、私はそんなことは無視して、黙っていました。
後ろの吉田夫婦はこそこそ内緒話しているようです。

そして、吉田宅まであと2〜3分くらいの所まで来たとき、
小さなか細い声で、吉田さん(主人)が切り出しました。

吉田   「あ・・あの・・・」

キタデェ〜!キタデェ〜!まってましたぁ〜!
なんて心で歓喜しながら、私は至って冷静な素振で

私    「はい?どうかされましたか?」

吉田   「さっきの家なんですけど・・・・・」
     「お時間さえ良ければ、もうちょっとお話させて頂きたいの
      ですが・・・・」

私    「そうですか。わかりました。」
     「じゃあ田山さん、会社の方へ行っていただけますか。」

と、ウィンクしながら言いました。
田山さんはチキショー!と言うような表情をしながら
「了解でーす!」と車を方向転換させて、会社に向いました。

そして無事会社に着き、私は通称マル決部屋と呼ばれる、応接室に
お客さんを座らせ、「ちょっと待っててくださいね」と言い残し
事務所の方に行きました。

私    「部長〜、森脇さん所まだ具体的な話入ってないですか?」

と、吉田さんに聞こえるように大きめな声で山本部長にウィンクしながら
言いました。

山本部長 「あ〜、さっき富ちゃんの入れ替わりで案内したお客様が
      気に入ってるみたいやで〜!電話があったわ〜」

とこれもわざと聞こえるように返してくれています。

私    「まぢっすか!これは優先順位とらんと」

といいながら、デスクの引き出しから『買付証明書』を取り出し、
すぐさま、応接室に戻りました。

つづく
次へ