◇▲不動産心理学の編・・・『頼りがいのある人』▲◇ ●(第8話)

山本部長:「しかし、ここからが勝負やで〜。『いい人』ときて『きっちりした人』
のつぎは『頼りがいのある人』や!」

山本部長:「まずな、お客さんというのは、後ろの座席から、営業マンのことを、
       よ〜く観察しとる。そこをよ〜く覚えとけ!」
     「富ちゃん入社して1ヶ月やな、客に聞かれたら、5年と言うとけ!」

私:   「ご・・5年・・・まだ僕なにも解らないっすよ」

山本部長:「あほっ!1ヶ月や言うてみぃ〜、客になめられるし、まず、本音は
       言わんやろ。客からしたら、お前はプロやと思ってるんや。
       「解りません」や「後で調べます」      
      なんか言ったらあかん。はっきり言って、客には、この地域の
      ドブ板の数まで知ってるように思わせるんや!」

私:   「でも・・僕、この地域の事や不動産のことまだよくしらないし・・・・・」

山本部長:「適当でええねん!適当で!!。でも最低限、学校やスーパー・
       大きな病院位は把握しとけ。」
      「たとえば、客が、「この物件の近くに小児科ありますぅ?」
      と聴いてきたら、大きな病院しか把握してないわな、
      その時は、適当に「あぁ、物件から400Mくらいのところに、
      山本小児科と言うのがありますよ」と適当にはっきり言うねん」

私:   「でも・・そんな適当に名前まで言うんですか?
       あとでばれたら怒られますよ」

         さて、こんなので通用するのであろうか?

山本部長:「あのな、だいたい、物件の半径1kmくらいの所を探せば、
       けっこうあるもんや」

私:    「でも、さっき半径400mくらいって・・・言いましたけど」

山本部長 「そんなもん、1kmも400mも変わりあるかいっ!、それに、客
        はいちいち、病院の名前まで覚えてへんし仮に、病院が
        なかったら、『去年、山本小児科つぶれたらしいですわ〜』
        とでも言ったらええねん!」

私:   「はぁ」(なんか不安になってきた・・・嘘ばっかりやん)

山本部長:「あとは、物件のこと、いろいろ聞いてきよるから、構造・築年数
       ・向き等は物件資料に書いてあるから、その辺は答えられるわな。
      客が一番気にするのは、欠陥住宅や!ちゃんと建ててるんだろう
      か・・と不安がるわけや、それを聞かれる前に、こちらから、建築の
      プロみたいな顔して、壁を叩いたり、床の軋(きしみ)をチェックしたり、
      はたまた、基礎を叩いて見て、こう言うんや「う〜ん!さすが、大工
      の山田さんやな。今回もしっかり建てとるな」とそのあと、「いやぁ、
      この大工の山田さんね、この地域では有名な大工さんで、そら、
      腕が確かで、人気があるんですわ〜」
      と、もう、客の不安は何処行く風や!、ここまできたら、お客さんは、
      富ちゃんのこと、きらきらした目で見て「頼りがいある営業マンに
      当たったわ〜」 となるわけや!

私:   「でも・・・なんか、でたらめばかりで、後が恐くて、僕にできるか
      自信がないです・・・」

このとき、山本部長は、私の顔をジーっと見つめ、諭すというか、
落ち着いた感じで、まるで
催眠術でもかけるような口調でこういいました。

山本部長 「ええか・・富ちゃん。客にしたら、一生に一度あるかないかの
        大きな買い物や、おまけに何千万と言う借金も作ることになるんや、
       そらぁ〜怖いで、でも、買いたいんや、自分の城を持ちたいんや、
       そういう心境の中で、客は悩んどる。鳥で例えれば、巣立ちをする
       寸前の雛鳥や、なかなか飛びたてられへん。それを我々が、
       ちょいっと、背中を押してあげるだけや、それだけのことや、・・」

「な・・・富ちゃん、嘘も方便や、ワシらは、不動産という、素晴らしい財産を
提供する、コウノトリや・・・わかるか。ちょっとした嘘で、
客は財産をもてるんや!」

私は、そのとき山本部長の目が「ピカっ」と一瞬光ったように思えました。

私は、何か、得体のしらない何かに吸い込まれるような気がして、
一瞬軽い目まいがしました。

         次号を待て!!!・・・・・・・第9話へつづく

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