●  これがテンプラだ!  ●(第3話)

隣に座っている平山さんが小声で「あほ、早よ、テンプラせんかい!」
と言われ、「はぁ?テンプラ?」と聞くと、「そんなんも知らんのかィ!」・・。

どーやらよくよく聞いてみると、お客様が来店した時に、当社は
活気があって、契約バンバンしている会社だということを植え付けるために、
こういうことをするそうです。
会社の電話機から、会社の電話番号を押すと会社の電話が鳴りますよね。
それに出て、相手もいないのに「契約ありがとうございます」なんてことを
大声で言うのです。これを業界では
「テンプラ」というそうです。
これをやると、お客様も気分がのるらしい・・・ほんとかな〜?
(一部の地域ではカラ電と言うそうです)

そして・・・、隣の別室の応接室で、お客様と応対中の横田課長との会話に
聞き耳を立てて見ると・・・・・・・・

客 : 「しかし・・お忙しいのですね。不動産はよく売れているのですか?」

横田: 「はい、よく売れていますね。特に当社は物件の保有数では、
      地域一番なんですよ!」(嘘ばっかり)

客 : 「へぇ〜、そんなに物件をお持ちですか?すごいですね。」

横田: 「えぇ、まぁ、当社の場合は、この地域だけでも、まぁ、10店舗
     ありますからねぇ〜」(おいおい、5店舗だろ!)
    「それに、創業40年の老舗ですから、この地域の方は、不動産なら”
     よいこ不動産”という感じで、もう、浸透しとるんですわ!」
     (もう、えらそうになってる・・創業40年???)

客 : 「え、40年ですか?けど・・免許番号が(2)番ですよ?」
    (解説・よく、不動産屋の看板に、大阪府知事 (2)第12345号
     のカッコ内の数字は3年毎に増えるので・・「注・現在は5年」・・
     (2)は6年以上9年未満営業していると言うことになる。)

横田: 「ほぉ〜、お客さんよくご存知ですな。実は当社の先代社長は
      個人営業でやってまして、いま、当社は株式会社でしょう、
      個人から法人になる時は免許番号が(1)からになるのですよ。
     ほんとなら、(13)番ちゅーことですわ〜。」(そこまで嘘いうか〜)
     「ところでお客さん・・・この地域の方じゃあないですね!」

客 : 「え!なんでわかるのですか??」

横田: 「だって・・・・当社のこと知らないでしょう?」
     「さっきも言いましたやん。この地域の方は、不動産なら”
     よいこ不動産”という感じで、もう、浸透しとるって
      (あかん・・完全に横田のペースや)

と言うような会話が聞こえてきました。完全に横田課長のペースです。
しかし、こんなくだらない「テンプラ」がこんなにお客の心理に影響が
あるのか・・・と驚きつつ、よくあんなでたらめが、次から次へと出てくる
もんだと、内心、いつか自分もこうなるのかと不安でいっぱいでした。

次回第4話をお楽しみに。

次へ